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感情を出すのが怖い(2)

2008年09月10日掲 載

 「感情を出すのが怖い(2)」

心理カウンセリングの中でクライアントのA子さんが使った赤と淡い青の同心円の絵。中心では燃えるような赤が勢いのいいタッチで描かれ、外側の淡い青の膜を突き破ろうとしているように見える。
「そう、私が人といて緊張する時って、こんな気分なんです」。
言いたいことがある時ほど怖くなって、気づかれないようにそっと感情を隠してしまう癖があるという。
「それでかえって疲れてしまって、人と向き合うのが面倒くさくなるんです。考えてみれば子どもの頃から、大人しいいい子やっていたみたい。だいたい家の中でもパパやママが感情ぶつけてるとこあんまり見たことなかった。家庭的にそんな大きな問題もなかったし。結構、クールな家族だったかも。一つだけ覚えているのは、ママが何かで怒った時に、パパが1週間、口をきかなくなったんです。両親が一緒に喜んでくれたのは、私が学習塾に行くと決めた時と、高校入試に成功した時。だから親の期待に応えていれば、両親も仲がいいのかと思って育った気がしますね。私たちの世代ってわりと似た感じの家庭が多いんじゃないかと思います。父親はしっかり仕事して、母親は子育てや家事に励む。子どもは普通に学校に通う。パパもママも特別な存在ではなかったけど、そんな平穏な家庭生活に疑問はなかったし」。
そう言いながら、A子さんはしばらく自分の絵を眺めていたかと思うと、あれっ!と声を上げた。
「この自分が描いた絵を見ていたら、ママが怒った時のことを思い出しましたよ。あれ以来、ママは感情をストレートにはパパにぶつけなくなったんですよ。だから、なんとなく表面は静かな感じ、でも内側ではイライラした気分が渦巻いているのを私は子ども心にも感じてた。だからママが優しい態度の時ほど私は緊張してしまうんです。う~ん、なんか今の私の癖はそっくりかもしれない」。
こんなことを自分に言い聞かせるように話しながら、今度は急に恋人のことに話しが移った。
「親の影響にしても、私が感情をオブラートに包んでいるとしたら、彼にもどっかで緊張させてるのかもしれないですね。彼は、かつての子ども時代の私の気分かもしれない。どうしたらいいんだろう?」。

困った顔のA子さんだったが、自分の癖がどこから来たのか思い至ったり、どうにかしたいと感じているとしたら、恋人との関係も今までとは違ってくるのではないだろうか。
「家でも少し色使って落書きしてみようかな。なんか絵を描くって、鏡を見ているみたいですね、心の鏡というか。今度のデートの時には、出かける前に心の鏡を覗いてから出かけるようにします」。
そう言いながら、A子さんはその日描いた絵を大事そうに持って帰っていった。

※カウンセリング内容は設定を変えてあります

(色彩心理学者 末永蒼生)

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