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2015年8月号 【末永蒼生の子育てQ&A】

2015年08月10日掲 載

親と子のための色彩心理入門
第19回 「 配色の意味⑦~多色と無彩色の配色は“希望と絶望”を語る」

Q:
10歳の女の子です。もともとカラフルな色使いの絵が好きだったのですが、このところ絵の中に時々黒っぽい色を塗り込めるようになりました。なんだか一枚の絵の中に昼と夜が描かれているような感じです。これには何か心理的なことが関係しているのでしょうか


A:

多色は前向きな希望、モノトーンは絶望感を象徴することもある
色はその一つひとつが喜怒哀楽の感情を反映していることが少なくありません。
たとえば、赤がやる気、黄色が楽しさ、青が悲しみといった具合に……。

絵の中に多くの色が同時に使われる時には、興味が外に向かい様々な感情が溢れ心が活性化していることが多いといえます。一方、白や黒などモノクロームはどちらかというと感情を抑え気味の時に好んで選ばれることが多いのです。
ですので、一枚の絵の中に多色表現とモノクロームが同時に表われるような構成の絵は、心躍るような快活な気分と感情が沈黙してしまった息苦しさが同時に共存している心理状態ということができます。喜びと悲しみ、希望と絶望といったような相反する気持ちが同時に湧きおこっているのかもしれませんね。

お子さんは年齢的に見ても、学校生活では楽しい反面、成績や受験といったことが少しずつ気になる年頃ですし、プレッシャーにも敏感になる時期なのではないでしょうか?
あるいは将来の進路への希望と同時に目的が達成できるかどうかという不安を抱えていることも少なくない年頃です。
場合によっては、親しい友人とクラス替えで離ればなれになったとか、家族で大切な存在を亡くしたなど喪失感がこのような色彩表現に表われるケースも実際にあります。

私がこれまでに見た子どもの絵で、多色とモノクロームを対比的に表現したもので忘れられないものがあります。
それはベトナムの子どもが描いた絵でした。
かつてベトナムではアメリカとの戦争で多くの犠牲が出ました。その戦争の記憶を子どもたちが描いた絵がホーチミン市の戦争博物館に展示されていました。その中に、画面を左右に分割するように多色とモノクロームが使われている絵があったのです。
この場合、多色は平和で幸せな世界を表しモノクロームは爆撃機の影が黒で描かれた戦争の世界でした。二つの世界の記憶を小さな胸に抱えた子どもの心が伝わって来るようで切ない気持ちになりました。子どもはどんな状況の中にあっても、その時々の思いを精一杯絵で伝えようとしているんだと思います。

ベトナムの少女の絵.jpg
ベトナムの少女の絵。年齢氏名不詳。
右側には平和な世界に生きる幸福感が多色で、左側には爆撃機のシルエットが黒々とした色で表現されている。
心に希望と絶望が同居していることが感じられる。

 



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