和の色つれづれ
紫式部は光の演出家
2008年07月03日掲 載
今年は 『源氏物語』 が書かれて千年ということで、『源氏物語』 にちなんださまざまな催しが開かれています。私も、日本の伝統色を研究し始めた頃、平安時代の色に触れたいと夢中になって読んだものです。色彩心理という視点であらためて見直してみると、これほど興味深い文学はなかなかありません。
ご存知のようにこの物語の大筋は、光源氏と王朝の女性たちの恋物語なのですが、紫式部はそれぞれの女君たちに、シンボルカラーともとれる衣装の色を与えているのです。その色がまた、一人一人の性格や心理を見事に表しているのが、驚くばかり!
この話は書き出すと長くなりそうなので、いずれということにして、今日は 『源氏物語』 の中から、この季節に相応しい私の好きなシーンを、ひとつご紹介しましょう。
「蛍」という巻のワンシーンです。
光源氏には、父親役をつとめる玉鬘(たまかづら)という若い姫君がいます。その姫君に心を寄せている貴公子がいるのですが、なかなか傍に寄ることさえできません。当時、貴族の女性たちは、家族や夫でもない限り、人前で顔を見せたりすることはなかったのです。
ある梅雨の夜、姫君の元に近づいた光源氏は、衣装の下に隠しておいた蛍を部屋の中にいっせいに放ちます。そこでかの貴公子は、闇夜の中で無数の蛍の光に一瞬照らし出された、美しい姫君の顔を垣間見ることができた・・・というお話です。
何だか映像が浮かんでくるような、美しい場面だと思いませんか?!
紫式部は色彩表現だけではなく、光の演出にも優れた才女だったのですね。
蛍の光で愛しい人の顔を見るなんていう体験、環境破壊が進んだ現代では、残念ながらなかなかできそうにありませんね。
(「色彩学校」プロデューサー 江崎泰子)

和の色つれづれ
2008年06月18日掲 載
和の色つれづれ・・・
平安時代に生まれた美しい伝統色名や「重ね色目」、江戸庶民が生み出した歌舞伎、浮世絵、粋な流行色……などなど。
日本で育まれたすばらしい色彩文化について、ご紹介していきます!



