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2006年07月27日
パソコンは21世紀のエレキギター
パソコンの普及で仕事は便利にもなったが、その分、日々機械に使われているような気分になることもある。チャップリンの映画『モダンタイムス』は機械にこき使われる人間の滑稽さが面白おかしく描いているが、あの映画を最初に見た時大笑いした自分が、今やその滑稽な人間になってしまっているのかもしれない。
そうは言っても、IT技術の普及はいい面もないわけではない。つまりパソコンを使えば、誰もが音楽CDや映像DVDを出せるようになった。つまり作家とプロデューサーの一人二役を兼ねて作品が発表出来る。
これは60年代の音楽シーンを思いおこさせる。つまり、特別な音楽教育を受ける以外にプロの音楽家になる道がなかったそれまでと違い、エレキギターの普及によって若者たちが世界に飛び出すことが可能な時代になったのだ。今、スーパースターになって活躍している矢沢英吉や坂本龍一も、二人目のエルビス、五人目のビートルズを夢見たかつての若者たちだったと思う。
その意味では、パソコンはそれを表現に利用すれば21世紀のエレキギターだ。そんな時代を反映して、僕のところにもいろんな“作品”が送られてくる。知っている人たちが、どんどん映像監督やミュージシャンになってしまうのだ。
ハート&カラーが主催している「色彩学校」や「子どものアトリエ・アートランド」の卒業生たちも、その例に漏れずさまざまな表現活動を繰り広げているようだ。
●ある卒業生が制作したDVD紙芝居『Knife』
「色彩学校」には我ながら驚くほど多様な人々が集まってくる。そんな受講生の一人、TAKAKOこと数野尊子さんからDVDが届いた。タイトルは『original DRAMA collction Knife』それはなんとも不思議な映像作品だった。アニメ、紙芝居、音楽……。いろんな方法がミクスチャーされた試み。ドラマの内容はさらに破天荒。時空を越えた魂の旅。「Knife」とは呪文剣の精霊を宿した少女の名前。そのオーラ輝く少女を軸に天文22年から慶長の関ヶ原の戦いの時代まで、松平竹千代から真田幸村、才蔵、明智光秀までが、アインシュタインの相対性宇宙を遊泳するように、愛のメッセージを奏でながら活躍するシュールな物語。僕は自分の子ども時代にわくわくしながら見た東映時代劇『里見八犬伝』を思い出してしまった。
もしかしたら、少女Knifeは、この作品を制作したTAKAKOその人ではないかしらと思う。ひょっこり「色彩学校」に遊びに来てくれる時など、この「Knife」の登場人物そのもののような、ちょっとこの世の人とは思えない超カラフルなコスチュームで登場する。なかなかのオーラである。お話をすると、子どもがそのまま成熟したような無垢な言葉が飛び出してくる不思議な存在感。
実は、数野尊子さんはカラーデザインから声優養成までを手がけるアクトウリス(http//www.acturis.jp/)というユニークなスタジオを経営している。子どものような天衣無縫の数野さんと会社経営者の数野さんが僕の中ではうまく結びつかなかったのだが、このDVD「Knife」を見て初めて納得がいった。きっと彼女にとっては、仕事も生活もこの世の時間の全てが、この魂のオーラを輝かせ、出会う人々の心を明るくするための活動なのだろう。「色彩学校」と数野さんがご縁があったのも今さらながらうなづける気がする。
写真:TAKAKOさん制作のDVD紙芝居『Knife』
●健ちゃんはミュージシャンになった
数年前まで「子どものアトリエ・アートランド」に通ってきていた男の子、健ちゃん。当時、慢性的な病気を抱えていたこともあって、小学校にはほとんど通えない状況だった。その代わり、アトリエはすっかり気に入って毎月やってきては絵や工作に熱中していた。恐竜図鑑を写せば天下一品だし、好きな大相撲からヒントを得てオリジナルの取組み四八手や番付表を作ってしまうほど。インスピレーションとアイデアいっぱいの子だった。その健ちゃんも中学校に入るころにはアトリエを卒業。しばらくしてから、突然、自作のCDが送られてきたのだった。健ちゃんはいつの間にかミュージシャンになっていたのだ。同封の手紙には次のように書いてあった。
「ごぶさたしています。けんいちです。最近、絵はあまり書いていませんが、音楽をやって過ごしています。私はバンドでベースを弾いています。CDを作ったので聞いてください」。
アトリエで養った健ちゃんの創造力はすっかり音楽の才能として開花したらしい。これって、アトリエのセンセイとしては最高に嬉しい!
それから2、3年後、またまた健ちゃんから2枚目のCDが送られてきた。「私も19歳になってしまいました。音楽をいろいろやっています。自信作とまではいかないのですが、ぜひ、聴いてください」。
CDのタイトルは『かぜそよぐとき』だった。タイトル通り、草原に風が吹き渡って行くようなさわやかな曲が収められていた。
それから間もなく、健ちゃんがボリビアに音楽修行に出かけたという便りが母親から届いた。うーん、やっているな、健ちゃん。この世にはいろんな事情で学校に行けなかったりする子どもがたくさんいる。子どもが育つ道筋も、社会に関わっていく姿も様々だ。しかし、どんな道であっても、その子どもを生かしていくのは創造力であることを僕は信じている。健ちゃんの場合は音楽を胸に世界に飛び立っていこうとしている。健ちゃん、心の中にいつも風がそよいでいるんだね。
写真:健ちゃん作成の自作CDジャケット
投稿者 heart-color : 2006年07月27日 18:45
